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ペルーの神話
目次
- 雷光と雷鳴の由来
- ヴィラコチャ神の創造
- 四つの風の起源(一)
- 四つの風の起源(二)
- 人類創造(一)
- 人類創造(二)
- 月はなぜ夜のみ光るか
- 大洪水と鳥乙女
- ラマの予言
- ヴィラコチャ神と人間との争い
- 黄金の楔
- ペルー人の階級の由来
- 海に消える神
- 四人の兄弟
- 親子の試し
- 海の魚の起源
- 動物の起源
- 虹と魔の石
- 水晶の中の男
- 湖の女神の怒り
- パリカカ物語
- フアシアクリ物語
- 石が人になった物語
- オランタ物語
神名リスト
| 神名 | 概要 |
| コン、パリアカカ、コンチキ、イラチキ、チュロクェラ | 雷の神。ペルーでは複数の雷雨の神の名の下に崇拝されている。また、雷電は壺を打ち砕くから起こると考えられ、雨や霰や雪は、水を振りまくから起こると考えられている。のちに一個の雷の神を作り上げた。その神は新生の雷雨の神は、人間の形をして頭覆いをかぶって、自身の顔を隠している。その神は自分の側に水瓶を抱えた一人の妹を連れていてこれが雨を司る神とされている。 |
| パチャカマック神 | 大地の精霊。大地そのものではなくて、大地から生まれ出るものに生命と活力を与える。大地に生まれ出るものを司る精霊。のちにパチャルラック(あらゆるものの作者)と呼ばれた。 |
| パチャママ女神 | 大地の精霊。大地そのものを形作るものを司る精霊。ある地方ではパチャカマックと夫婦神として崇拝された。 |
| ヴィラコチャ神 | 水の泡を意味する。一種の創造神でチチカカ湖の底から大地に現れ、太陽や月や星をつくって天界に配置し、石から人間をこしらえて地上のいろんな事物をつくり、再びチチカカ湖に姿を隠したと言われている。文化的英雄とも。水草を顎鬚とした姿に現される。アイマラ・クチュア族はこの神はあらゆるものをつくり所有しているため、なんの生け贄も捧げなかった。 |
| パチャヤチャチック神 | 宇宙の統治を司る神で右の手を挙げ親指と人差し指を立ててあらわされる。 |
| ママ・アルパ女神 | ペルーの収穫の女神、大地の女神。人間の糧を恵む。たくさんの乳房を持った姿に現される。 |
| ママ・コチャ女神 | 海の女神。あらゆる人類の母であると信じられている。母なる海の意。 |
| ママ・コタ女神 | チチカカ湖をママ・コタと呼んで崇拝した。「母なる水」の意味。魚類の賦与者。二つの像がママ・コタに捧げられた。一つはコパカフアナと呼ばれて、人間の頭と魚の体をした姿が刻まれた青緑色の石像。もう一つはコパカチと呼ばれて多くの蛇に取り囲まれた神の姿をして水を具象化したもの。 |
| 太陽神 | インカとは「太陽の民衆」を意味する。インカ人は太陽を自分たちの創造者として崇拝している。(自分たちの祖先としてではない)メキシコでは太陽を先祖とする崇拝。パチャクチックが夢に太陽が己の前に現れて呼びかけられたと言ったことから祖先として信仰が強くなった。インカは太陽の地と言われ、祭礼としてインチプ・ライミ、シトック・ライミがあり、若干の人間犠牲を捧げるようになっている。美しい女児は八歳になるとママクナと呼ばれる女性訓練師に預けられ、アクラ・フアシと呼ばれた一種の僧院で起伏し太陽神の祭礼で犠牲となった。 |
| マンコ・クカパック | 太陽と月の子で、インカ王族の神話的祖先であると信ぜられた。その妹で妻であるママ・オウロと天界に住んでいたが、太陽と月との命によってチチカカ湖の近くに降って人間に様々の技を教えた。 |
諸詩
雷の神の詩
恵深き王子(みこ)よ
見よ、御身の兄弟は
いまし御身の壺を
粉々に打ち砕きつ
その撃砕よりぞ
電光(いなずま)は閃き
雷は轟く
さて王子御身は水をとりて
雨を降らし
霰を降らし
また雪を降らす
ペルー人の祈りの言葉
「天と地とあれ」
「人間あれ」
「書あれ」
「夜あれ」
「光あれ」
雷光と雷鳴の由来
アタグジュという神が、世界のあらゆるものをつくって、自ら天上界を支配することにしたが大地の上には、グァチミネという族が住んでいて、精一杯わがままなことをしていた。
グァチミネは「光なきもの」もしくは「闇の子」という意味であった。
創造神アタグジュはあるとき人類の始祖であったグァマンスリという男を呼び出して、大地に降り子孫を増やすように言った。
そこでグァマンスリはグァチミネ族の女を娶ったが、グァチミネ族は、グァマンスリを憎んで、アタグジュ神から言い遣って大地をわが物にしようとしていると、自分たちが大地の上の住民として始まりであると言ってグァマンスリを殺してしまった。
暫くして、グァマンスリの妻が双子を産んだ。
一人はアポカテクィル、一人はピグエラオと呼ばれた。二人は大きくなるとグァチミネ族は父の仇であると言って、グァチミネ族を追い回しては殺していった。
すると、天上界にいるアタグジュ神が、黄神(黄金?)の鋤を大地に下して、大勢の人間が、グァチミネ族のために大地の下に閉じ込められているため、鋤で地を掘り返して、救い出してやるようにアポカテクィルに言った。
アポカテクィルは創造神の教えに従って、黄金の鋤で大地を掘り返すと、大勢の人間が続々と現れてきた。それが今日のアメリカインディアンである。
だから、アメリカインディアンたちは、アポカテクィルを自分たちの創造者として仰ぎ尊ぶ。
アポカテクィルは好んで投石器を使って、大きな石を投げ飛ばす。そして、大きな石が空を切って飛ぶとき、火花を散らして大きな音を立てる。それが雷光と雷鳴とである。
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ヴィラコチャ神の創造
チチカカ湖の水が騒ぎたち、湖の中からh鳥の神が現れた。それがヴィラコチャであった。
ヴィラコチャは光り輝く円いものをいくつとなくつくった。それには大きいものも小さいものもあった。
彼はそれらの円いものをことごとく天空に投げ上げて、それぞれ決まった路を歩くようにした。それは太陽、月、星であった。
それからヴィラクチャは大地をこしらえた。大地が出来上がると地に住むものを造ろうと一つの石を取り上げてどのような形にしようか考え、自分と同じ姿に似せて作った。
これがインカ族の始祖アルカ・ヴィカであった。
ヴィラコチャ神はそれに続いて石を取り上げてどんどん人間をこしらえた。大勢の人間ができると、ヴィラコチャ人間たちを引き連れてクスコという地に来てそこに住むように人間たちに言った。
そしてアルカ・ヴィカにみんなの首領となって地を治めるように言い聞かせた。人間たちはヴィラコチャに教わった通りにクスコに住みインカ人の首府クスコはこうしてできた。
ヴィラコチャ神は万物創造の仕事が終わるとまたチチカカ湖の中深くに沈んでいった。
クスコの意味は「世界の臍(へそ)」の意味。
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四つの風の起源(一)
ヴィラコチャ神は、太陽、月、星、大地、人間などをつくり終えると、四人の召使をこしらえた。それは東の風と西の風と南の風と北の風とであった。
ヴィラコチャはこれらの風にそれぞれ大地の隅に行ってそこに住むように言った。四人の風はそれぞれ大地の東の隅、西の隅、南の隅、北の隅に行ってそこにすむようになった。
今日風が大地の四方から吹いてくるのはそのためである。
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四つの風の起源(二)
あるところにパカリという洞穴があった。洞穴の中には「曙」が住んでいた。
あるとき、この洞穴の中から一人の男が現れた。
それは東の風であった。やがてまた一人の男が現れた。二人は顔を見合わせて相手の名前を確認した、もう一人は西の風であった。
続いてまた二人の男が洞穴の中から出てきた。東の風と西の風とが二人の男に尋ねると、彼らはそれぞれ南の風と北の風であった。
四人の風は一緒にいても仕方がないというので、申し合わせて、それぞれ大地の四隅に行くことにした。だから今日でも、風は四方から吹いてくるのである。
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人類創造(一)
昔、マンコ・クカパックという神があった。大地の上に住む者がないのを悲しんで人間をつくろうと決心した。
そこで土をこねて、髪の長い人形、髪の短い人形、様々の人形をこしらえて、様々の色に塗り立てた。それが住むと今度は、それらの人間たちに命と魂を与えて、言葉を与えて、歌うべき歌を教えて、地に播くべき食物の種子を与えて、一度地の下に潜り込んで自分たちの住みたいところで大地の上に現れるように言った。
人間どもは暗い冷たい土の中を通って、洞穴の中から現れたり、丘の腹から現れたり、泉の水の中から現れたり、樹の幹から抜け出したりして、その地に住むようになった。
そして、自分たちの素性や起源を覚えておくために、お祭りの場所を定めたり、フアカという神聖な品物をこしらえたりした。
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人類創造(二)
パチャカマックが土をこねて、一対の人形を作った。一つは男で一つは女であった。
人形に命の息を吹き入れると、生きて動くようになったが、男は食べ物を手に入れることができないで、間もなく飢え死をしてしまった。
女は樹の根や草の根をかじって生き続けていたが、男がいないので寂しくて堪らなかった。
そこで太陽が可哀想だと思って、女に一人の男の子を恵んだ。するとパチャカマックがその男の子を殺して、地に埋めてしまった。
暫くすると、殺された男の歯から玉蜀黍が生え出て、あばら骨や肉から様々の食用植物が生え出た。
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月はなぜ夜のみ光るか
太陽(夫)と月(妻)は夫婦で、太陽と月は始めのうちは夜昼光を放って下界を照らしていた。
あるとき月が人間が無礼なことに憤り地上の人間たちを殺してしまおうと企てた。太陽がそれを探り知ると、月を呼びよせて、人間を殺そうと企んだことを咎め夜昼光を放つことを辞めさせ夜だけ光るようにしかりつけた。こうして月は夜だけ光を放つようになった。
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大洪水と鳥乙女
昔大地の上に大洪水が起こり人間は溺れ死んでしまった。ただ二人の兄弟が生き残って、フアカクァンという高い山の頂に逃げ上った。二人は漫々たる水を眺めて、これ以上水量が増したら、山も水に浸ると心配したが水量が増すにつれて、山もおのずと高さを増していったので、二人は溺れ死なずに済んだ。
洪水が退いてしまうと、二人の兄弟は山を下って谷間に食べ物を探さなければならなかったので、谷のほとりに小さい家を建てて、いろんな草の葉や茎や根を採って、それを食べて命をつないでいた。
ある日二人が食事をしようと思って家に帰ってくると、食べ物や飲み物の用意が整えてあった。二人は互いに顔を見合わせて、自分たちが留守の間に食事の支度が出来ていたことを驚き喜んだ。
あくる日も、またそのあくる日も、やはり二人のいない間に、ちゃんと食事の用意が出来ていた。そうしたことが十日ほど続くと、兄の方が不審で堪らなくなり、弟に食べ物を探しに行かせて自分は残って誰が食べ物を持ってくるか見届けることにした。
弟が食べ物を探しに出かけた後で、兄は家の後ろに隠れて、じっと様子を見ていた。しばらくすると、アクァという鳥と、トリトまたはクァカマヨという鳥とが、カナリ人のような衣と髪の結い方をしてどこからとなく現れた。外着を脱いだところを見ると、鳥ではなくて、麗しい顔をした乙女であった。
それを見ると兄は、叫んで隠れているところから飛び出してきた。二人の乙女はそれに気が付くと、ひどく腹を立てて、たちまち鳥の姿に返って飛び去ってしまった。
暫くすると弟がかえってきたので兄は弟に事の次第を話した。そこで明日からは兄が食べ物を探しに行き、弟が様子を見るため残ることになった。
二、三日たっても乙女たちの姿は現れなかった。しかし、弟は根気よく家の後ろに隠れて、じっとあたりに目を配っていた。十日経つと二羽の鳥がどこからとなく飛んできた。
二羽の鳥は外着を脱いで美しい乙女の姿になると、かいがいしく食事の支度をし始めた。弟は足音を忍ばせて、戸口に歩み寄るなり、ぱたりと戸を閉めてしまった。
その瞬間に一人の乙女は鳥に変わって外に飛び出したが、もう一人の乙女はすっかり家の中に閉じ込められて、まごまごしていた。
弟は静かに家の中に入って行った。そして穏やかな声音で毎度の食べ物の支度のお礼を言ったが、乙女はその言葉が耳に入らない様子で嘆き悲しみ、ここから出してくれと頼んだ。
弟はそんなことを言わずに自分たち兄弟のお嫁になってくれと答えた。美しい乙女は相手がどうしても自分を逃がしてくれそうにないのを見ると、とうとう兄弟の妻となることを承諾した。
乙女は六人の男の子と女の子を産んだ。そして、カナリ族はこれらの男女の子孫である。だからカナリ族はクァカマヨ鳥を非常に尊んで、祭礼のときには、いつもこの鳥の羽根を使うのであった。
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ラマの予言
ある男が一匹のラマを飼っていた。
ある日、その男が、草のよく茂っている所にラマを引っ張って行って、草を食べさせようとした。しかし、ラマは悲しそうになるだけでとんと草を食べようとしなかった。男は驚き怪しんで、草が気に入らないのかと尋ねると、ラマは悲しくて食べられないと答えた。男は自分は親切にラマを世話してると答えたが、ラマは、そうではなく今から五日経つと海の水があふれて、大地を沈めてしまうので草を食べている気にならないと答えた。男は本当かと問い返したがラマは決して間違っていないと答えた。男がどうにか逃げ延びる道はないのかと尋ねると、ラマは五日間の食べ物を用意して、ヴィラ・コト山の頂に登ったらいいと答えた。
男は大急ぎで五日間の食べ物を用意した。そして、それをラマの背に積んでヴィラ・コト山の頂に登るとあらゆる鳥や獣類がもうちゃんとそこに逃げてきていた。
暫くすると、海の水がにわかに高まって、大地の上に溢れてきた。人々は瞬く間に溺れ死んでしまった。
水量は日ごとに増して、五日目には、ヴィラ・コト山の頂に迫ってきた。鳥や獣類は水に押し流されまいと思ってお互いに押し合いへし合いし始めた。そのうちに一匹の狐が押し出されて尻尾を水に濡らした。だから狐の尻尾は、今日でも黒い色をしているのである。
五日過ぎると、水がだんだんと引き始めた。引き残った一人の男は、ラマを連れて下に降りてきた。今日のペルー人は皆この男の子孫である。
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ヴィラコチャ神と人間との争い
ヴィラコチャ神がチチカカ湖から出て、西の方に旅をしていると、人間どもがその姿を見つけて、変な奴だ、碌な奴ではないと詰り、殴り殺そうとした。
ヴィラコチャ神は腹を立てて、物凄い暴風を起こした。見る間に、家やその中に入っている品物がめちゃめちゃに砕け飛んでしまった。人間どもは非常に驚き恐れて、ヴィラコチャ神の前にひれ伏して、乱暴を働いた罪を誤り、以後はヴィラコチャ神を首領にすると言った。
ヴィラコチャ神は気色を治して、人間の罪を許し、生きていくうえで利益になることを教えることにした。人間たちはヴィラコチャ神を非常に尊び敬って、パチャヤチャチックと言う名を捧げることにした。(パチャヤチャチックという語の意味ははっきり分かっていないが、「パチャ」は英語のThingsにあたる。またペルー民衆によってしばしば「世界」の意味に使われる。)
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黄金の楔
太陽と月とに二人の子があった。一人は男でマンコ・クカパックと呼ばれ、一人は女で、ママ・オウロと呼ばれた。二人は兄妹であり、夫婦でもあった。
あるとき太陽の神が二人を呼んで、天界から人間の世界を見下ろしていると、人間どもはお互いに争い合うことと飲食して騒ぎ立てることの他、何も心得ていない、と悲しみ、二人を人間世界に送りいろんな技を教えるよう遣わすことにした。
マンコ・クカパックとママ・オウロはすぐに承知した。太陽の神は黄金でこしらえた一つの楔を与え、人間世界を歩いて、楔が地の中に沈むところで人間を教えるように言った。二人は黄金の楔を受け取って人間世界に降って行った。そしてあちらこちらと歩いているとクスコで黄金の楔がマンコ・クカパックの手を離れて、大地の上に落ち、土の中深くに沈んでしまった。二人はクスコの地に住家をこしらえた。そして人間たちを呼び集めては、いろんな利益になる技を教え込んだ。マンコ・クカパックは男の人たちに地を耕して穀物をつくることを教え、ママ・オウロは、女の人たちに糸を紡いだり、機を織ったりすることを教えた。
人間たちは非常に喜んで、我も我もとクスコに集まって来て、永くそこに住むことになった。そして、後でクスコという町の出来る基となった。
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ペルー人の階級の由来
ペルー人が、太陽の教えに従ってクスコの街を立ててそこに住むことになると、太陽が三つの卵を彼らに送った。一つは黄金の卵であり、一つは白銀の卵であり、一つは銅の卵であった。人々は驚き怪しんで、太陽はどうして卵を届けたのだろうと話し合ったが、とにかく大事にすることにして、取っておいた。
暫くすると、三つの卵が割れて、三通りの人間が現れてきた。黄金の卵から現れた人間は、雄々しい姿をしており、白銀の卵から生まれた人間は気高い姿をしており、銅の卵から生まれた人間は卑しい姿をしていた。そして雄々しい姿をしている者は王者となり、気高い姿をしている者は僧侶となり、卑しい姿をしている者は奴隷となった。こうしてペルー人の間に三つの階級が出来たのであった。
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海に消える神
昔ソナパという神がいた。ソナパはペルーの村々を歩き廻って、人々に様々のことを教えることに努めた。彼はコラ・スヤ地方から方々を歩きまわっていたが、やがてヤムクィスパというところに来た。そしていつものように、人々にいろんないい事を教えようとしたが、誰もその言葉に耳を傾けるものがなかったばかりか、寄ってたかってソナパを嘲り罵るのであった。
ソナパは雨露をしのぐ宿も手に入らないで、野宿しなくてはならなかった。彼はヤムクィスパの人々のつれなさを恨んでその地の人間を水の底に沈んでしまうように呪った。すると、間もなく大水が出てきて村中が新たにできた湖の下に沈んでしまった。
ソナパはヤムクィスパを去って他の村に来た。村の人たちは一緒に集まって、結婚祝いの酒宴を開いていた。ソナパはその席に入り込んで、いつものようにいろんな良いことを教えようとした。しかし、村の人たちは酔いにまぎれて口々にめでたい席で下らぬことを言うからつまみ出せだの、もったいぶったことばっかりしゃべりお酒の味がなくなるだのと言って叫んだ。
それを聞くとソナパはこの地の人間を石にするように呪った。すると酒を飲んで歌ったり踊ったりしていた人々がみんな冷たい石に変わってしまった。
ペルー中を歩き廻っていたソナパは、ある日カラヴァヤ山の側にやってきた。彼は大きな十字架をこしらえてそれを肩に乗せて、カラプクという丘の上に運んで行った。そして、そこに集まっていた人々に向かって、熱心に教えを説き始めた。そのうちに感極まって涙を振り落とした。その涙が自分の前にうずくまっていた首長の娘の頭にかかった。それを見ると、人々は怒りだして、無礼な奴だと生け捕りにしようとソナパを縛り上げてカラプク湖そばの岩室に押し込んでしまった。
ソナパは暗くて冷たい岩室の中でただ一人思いに沈んでいると、夜が明けかかった頃に、かすかな足音がした。
ソナパが怪しんで頭を上げると、目の前に一人の麗しい若者が突っ立っていた。若者はソナパに向かって自分が天上界からあなたを見守っていらっしゃる神様からの使いであることを伝えた。そして大勢の番人の眼をかすめて、ソナパを岩室から連れ出した。
ソナパはカラプク湖の中に自分の外着を投げ込んだ。そして、それを船にして湖を渡りきると、チャ・マナクの街に入ったが、古木尾でも人々はいろんな娯楽に耽って、彼の言葉を聞き入れようとしなかったので、彼は街の物をすっかり石にしてしまった。
こうしてソナパは、自分の教えに従うものに幸福を与え、これに背くものを罰した後で、チャカマルカ河を降って海に出て、そのまま姿を隠してしまった。
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四人の兄弟
昔、四人の兄弟がパカリ・タムプ(曙の家)というところに住んでいた。
ある日一番年上の兄が近くの山頂に登って四つの石を拾い一つを東、一つを西、一つを南、一つを北に投げながら、自分は世界の四つの方角に石を投げたから目の届く限りのあらゆる土地は自分のものだと三人の兄弟たちに言った。二人の弟は兄の言葉に従うことにしたが、一番末の弟だけは承知しなかった。兄がたったそれだけのことで大地をわが物にされてたまるものか、自分が兄をやっつけてようと思っていい機会を狙っていた。
ある日彼は一番年上の兄を洞穴の側に誘い出し、隙を見て、兄をその中に押し込んで大きな石で洞穴の口をふさいだ。
またある日、二番目の兄を誘って高い山頂に登った。そして油断を見すまして、兄を崖から突き落として、落ちていく間に石に変えてしまった。三番目の兄は、それに気が付くとどこともなく逃げ出してしまった。こうして一番末の弟が見渡す限りの地を自分のものにしてしまった。
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親子の試し
コニヤラ・ヴィラコチャという精霊がいた。悪戯好きで威張り返ることもあれば、貧しいアメリカインディアンのような襤褸(ぼろ)布を纏って人々を騙したりするのであった。
あるところにカヴィラカという美しい女がいた。人々は彼女の美しさを心から褒めたたえていた。ある日カヴィラカは、一本のルクマの樹の下で熱心に機を織っていた。そこでコニヤラ・ヴィラコチャが一羽の麗しい鳥に姿を変えて、その樹の枝に止まって、自分の精液を一粒のルクマの実にして、カヴィラカの側に投げ落とした。カヴィラカはそれを拾い上げてすぐに食べてしまった。それから幾月か経つと、カヴィラカは一人の男の子を産み落とした。彼女は不思議でならなかった。その子供の父親がわからなかったからである。
男の子が這いまわるようになると神々や精霊どもの所に使いを立てて、誰が自分の子供の父親であるか話すように言わせた。神々や精霊どもは、美しい女の夫に選ばれたいと思って、みんな華やかに着飾って集まった。ただコニラヤ・ヴィラコチャだけは、乞食のように見すぼらしい服装をしていた。カヴィラカはコニラヤ・ヴィラコチャには目もくれないで、美しい衣をまとっている神々や精霊たちばかりを見つめながら、誰が子供の父親か問うた。しかしみんなお互いに顔を除きあうだけで、黙りこくっていた。カヴィラカは仕方がないので子供を地面におろし父の所へ這って行かせようとした。子供はコニラヤ・ヴィラコチャのそばにのこのことはいよって行った。そして、彼を見上げながらニコニコと笑った。
それを見るとカヴィラカは子供の父親が乞食だったと言って怒りだした。そしてものをも言わずに我が子を抱き上げて、一散に海辺をさして駆け出した。コニラヤ・ヴィラコチャはカラカラと笑い出して、今度は立派な衣に着替えて、カヴィラカの跡をつけて行った。しかし、自分の夫が乞食だと思い込んだカヴィラカは後をも振り向かずに、いきなり海の中に渡り込んだ。と思うと一つの岩に変わってしまった。
跡を着けていたコニラヤ・ヴィラコチャは、女の行方が分からなくなったので、あたりを見回していると、一羽の禿鷹に目が付いた。彼は禿鷹に向かって、女を見なかったか尋ねると、近くで見たがひどくふさぎ込んでいたと答えた。コニラヤ・ヴィラコチャは「誰でも禿鷹を殺すものは、自分も死ななくてはならぬ」と相手の鳥を祝福した。
それからなおカヴィラカの行方を捜していると、今度は一匹の狐に出会った。コニラヤ・ヴィラコチャは狐に女の行方を尋ねたが狐は、見てないと答えた。コニラヤ・ヴィラコチャは腹を立てて、「お前はいつまでも臭いにおいをしていろ。そして匂いのために、みんなから嫌われて、夜でなければ外出が出来ぬようになれ。」と狐を呪った。
そしてまた歩き廻っていると、い一匹の士師に出会った。コニラヤ・ヴィラコチャは獅子に向かって、女の行方を尋ねた。すると獅子は見たと答えた。コニラヤ・ヴィラコチャは喜んで「ありがとう。鷲は悪いことをしたものを罰する力をお前に授けてやるよ。そして誰でもお前を殺したら、お前の毛皮を頭や葉や目のついたままはぎ取って、お祭りのときにそれを着るようにしてやるよ。そしたら、お前は死んだ後までも、みんなから尊ばれるというものだ。」と獅子に言い聞かせた。
そしてまた、探し回っていると、一羽の鷹に出会った。コニラヤ・ヴィラコチャはまたも女の行方を尋ねた。すると、つい近くで見たからすぐに探し出せるでしょうと答えた。
コニラヤ・ヴィラコチャは喜んで、「いや、ありがとう。お前の河もお祭りのときにみんなが体に付けるようにしてやるよ」と言った。
それからなおも女を探していると、今度は数羽の鸚鵡(おうむ)に出会った。コニラヤ・ヴィラコチャは女の行方を尋ねた。すると、女は見てない、こんなところを探し回っても駄目だ。と答えた。これを聞くと、コニラヤ・ヴィラコチャは腹を立てて、「忌々しい奴だな。お前は今度遠くまで聞こえるような大きな声で泣かねばならぬぞ。そして、そのおかげで敵に見つかって、殺されてしまうんだぞ。」と鸚鵡を呪った。
こうして、コニラヤ・ヴィラコチャはとうとう海辺にやってきた。そしてカヴィラカとその子供が石に変わってしまっているのを見ると、非常に歎き悲しんで、いつまでも渚に突っ立っていた。
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海の魚の起源
昔は海の中には一尾の魚も住んでいなかった。一人の女神が少しの魚を小さい池に飼っているだけであった。人々は女神の所に行って、魚を海に放ってふえるようにするから魚を分けて欲しいと願ったが、女神は魚はいつまでも自分の持ち物にして置くといつも答えていた。精霊のコニラヤ・ヴィラコチャがこれを聞き込むと、いつもの悪戯気がむらむらと起こってきた。
彼はある夜、女神の池に忍び寄った。そして、池から海まで一筋の溝を切り開いたので、池の中の魚は溝を伝ってすべて海の中に逃げ込んでしまった。こうして、強のように海にはたくさんの魚が棲むようになった。
女神はひどく怒って、コニラヤ・ヴィラコチャを騙して殺そうとしたが、彼はいつもうまく切り抜けて、どこともなく姿を隠してしまった。
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動物の起源
昔、天上界に魚の神と鳥の神と獣の神が棲んでいた。あるとき魚の神が人間界には魚が一尾もいないから食べ物に困るだろうと、いろんな種類の魚を産んだ。そして、それらの魚にすぐに人間界に降って行って、海や川に住むように言った。魚どもは言いつけに従って、人間世界に降って、それぞれ海や川に住むことにしたので、人間たちは大変喜んで魚の神を褒めたたえた。
すると鳥の神がそれを見て自分もと言って様々の鳥の卵を産んだ。そして人間界に降って山や森や野に住むように言いつけた。鳥どもは言いつけに従って、人間世界に降って山や森や野に住むことにしたので、人間たちはますます喜んで、鳥の神を褒めたたえた。
すると獣の神がそれを見て、自分もと言って様々の獣を産んで、人間界に行って山や森や谷に住むように言った。獣どもはその言いつけに従って、人間世界に降って、それぞれ山や森や谷に住むことにしたので人間たちはより一層喜んで魚の神、鳥の神とともに獣の神を褒めたたえた。
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虹と魔の石
インカ族の最初の王マンコ・クカパックには七人の兄弟と姉妹とがあった。マンコ・クカパックは、王の位につくと国中の人々を呼び集めた。自分の部下の数を調べ彼らの力を図って近くの国々を従える企ての参考にしようとしたからであった。彼は大勢の家来たちを連れて、太陽の登ってくる高い山の頂上に登った。遥か彼方の空にいくつかの虹がかかっていた。
マンコ・クカパックはその良い兆しに喜んで自分の前途が輝く徴だと言ってチャマイフアリスカ(歓喜の歌)を歌った。しかしいつの間にか一人の弟の姿が見えなくなっていた。マンコ・クカパックは驚き、妹の一人を呼んで探しに行くように頼んだ。
妹はすぐに出かけて行った。しかしいつまでたっても帰ってこなかった。マンコ・クカパックはますます不思議に思って、今度は自分が二人を探しに出かけた。
あちらこちらと尋ねまわっていると、弟と妹が、魔の石の側に倒れて、息も絶えだえになっているのを言い出した。マンコ・クカパックは急いで二人を抱き起して、様態を見てどうしたのか尋ねた。二人は魔の石に引き留められて体を動かすこともできなくなっていると答えた。
これを聞いてマンコ・クカパックは非常に怒って、手に持っていた黄金の杖(パック・ヤウリという王者の徴)で魔の石を殴りつけた。すると魔の石が声を発して、二人の兄弟姉妹が罪を犯していてその報いで自分と一緒にいなければならない。もし黄金の杖がなかったらマンコ・クカパックも動けなくしてしまっている所だったと言った。
マンコ・クカパックは、弟と妹の悲しい運命を知ると、暗い気持ちになったがいくつかの虹を見た所に引き返していって、それを見つめながら、やっと胸の悲しみを押し殺した。
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水晶の中の男
ユパンクィが父のヴィラコチャ(インカ族の第八代目の王)の跡を継いで、インカ族の九代目の王となるとき、彼は王位継承の前に父の住んでいる館を訪れることにした。
途中でユパンクィは、ススル・プガイオと呼ばれる泉のほとりに来た。丁度その時一片の水晶が泉の中に落ち込んだ。ユパンクィは何気なくその水晶を拾い上げて、それを見つめた。するとそこに一人の男の姿があり、男はインカ族の王者のように、額に縁飾りをつけて、両耳に耳輪をはめていた。そして頭の後ろから太陽の光線のような光り輝く三筋の後光が指していた。
ユパンクィはその男の姿が目に付いた瞬間、覚えず驚きの叫びをあげた。しかし、もっと驚くことにはよく見るとその男は一頭の獅子を肩の側に引き付けて、一頭の獅子の頭を両の足の間に挟んでいた。ユパンクィはすっかり脅えて、水晶を放り出すと、逃げ出そうとした。途端に、ユパンクィを引き留める声が聞こえていうことを聞くように言った。ユパンクィは足を踏みとどめて、振り向いたが、人の姿らしいものは更に目につかなかった。しかし、怪しい声はなおも続いて、水晶の中の男がユパンクィの父で父と言っても産みの親のヴィラコチャではなく一家の親である太陽で、ユパンクィが多くの国民を征服するが、父なる太陽を忘れてはならず、生け贄を供え尊ぶように言った。
ユパンクィは太陽の教えを忘れず王位に就くと水晶の中で認めた通りの姿に太陽の像を造らせて、生け贄を供えることにした。ユパンクィは太陽が予言した通りに多くの部族を征服することができた。そして、それらの部族の者どもに言いつけて、太陽の神のために壮麗な神殿を立てさせることにした。
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湖の女神の怒り
ペルー人は非常にチチカカ湖を敬っていた。彼らは湖の主がいることを信じていた。それはママ・コタという女神であった。ママ・コタは(母なる水)という意味である。
チチカカ湖の水は様々の食べ物を人々に与えるから、こうした名をその主なる女神に付けた。あるとき、ファイナ・クカパックという方々の地を歩き廻っていろんなことを聞き込んだ新しがりの男が、チチカカ湖の中の一つの島の上に、や地理という神の社を立てようと決心した。そこでママ・コタ女神に旨を伺うと、チチカカ湖は自分の物だから他の神の社を建ててはならないという答えであった。
ファイナ・クカパックは人々に命じてその島に建てることはよして、アピングェラ島に建てるように言った。人々がまたママ・コタ女神に思し召しを伺うとそれもならないという答えであった。
ファイナ・クカパックは気を焦って、女神の考えを聞くから駄目だと黙ったままパアピチ島に神殿を建ててしまい、ヤチリ神に夥しいラマや子供や金属などを捧げた。それを見るとママ・コタ女神は火のように怒りだして、古くからの自分の領分を荒らしたことに対して凄まじい暴風を起こした。すると湖の水が波を建てて、パアピチ島とヤチリ神の社を水の底に沈めてしまった。
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パリカカ物語
昔、五つの卵が、とある高い山の頂に現れた。しばらくすると卵がかえって四つの卵から四羽の鷹が飛び出し、四人の優れた勇士となった。残りの一つの卵からは、パリカカと呼ばれる偉い男が現れた。パリカカは知恵才覚の優れた男で、英雄神であった。
パリカカは方々を歩き廻ってある日とある村に来ると、村の人たちが寄り集まって祭礼を催していた。パリカカは汚い衣をまとっていたので、誰一人目をとめる者がなかった。それどころか嘲り笑ったり、叱り罵ったりするものさえあった。
パリカカは村人の無礼を憎んだが、胸の怒りを押しこらえて、黙って突っ立っていた。すると一人の女の子が可哀想に思って、酒を満たした盃をもってきて祭りの日だから楽しく過ごさねばならないと言った。パリカカは女の子の優しい心をありがたく思った。彼は女の子をわきに呼び出して、小さな声で、五日後に大水がでて、この村は滅んでしまうから水の来ないところに逃げ出すように、それから誰にも話さないようにと言った。そしてとある丘の頂上に登って、暴風雨を起こしたので、大水が出て村中の人をおぼれさせた。
それからパリカカは、サン・ロレンゾという村にやってきた。美しい乙女が一人畑の側で激しく泣いていた。パリカカは怪しんでどうしたのか尋ねた。乙女はチョクェ・スソという名前で、彼女は水が足りなくて、玉蜀黍が枯れてしまうのが悲しいと言った。パリカカは乙女の美しい姿にすっかり心を魅せられて自分の愛に報いるならばいくらでも水を出すと言った。
乙女は考え深そうな目つきをして自分の畑だけではなく、みんなの畑に水を与えてくれるならばいうことを聞くと答えた。パリカカは遥かかなたに小さい河が流れているのに気が付いて、パリカカはすぐに野山に住んでいる鳥や蛇や蜥蜴や狐などに頼んで狐を棟梁にして、すぐに仕事にとりかかった。
あるものは草をむしり石を取り除ける。あるものは土を掘り返して溝をつくる。あるものは気を組んで堰をこしらえる。こうしてみんなで力を合わせて畑という畑にすっかり水が来るようになった。パリカカは乙女に約束を果たしたから約束を果たしてもらいたいと言った。乙女は喜んでパリカカと一緒になることを承知したが、もう一つお願いがあると言って、たくさんの水道のうちでココカロの水道が一番気に入ったので、その水道の源にあるヤナカカの岩の所に住みたいと言った。パリカカは乙女の望みをかなえてやることにした。
二人はヤナカカの岩の所に一緒に住むことになった。乙女は非常に喜んで、自分はいつまでもここにいて、死んだ後もここに残ると言った。そこでパリカカはとうとう乙女を石にして、ココカロ水道の源に留まらせることにした。
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フアシアクリ物語
卵から生まれ出たパリカカの子にフアシアクリという若者がいた。フアシアクリは惨めなほど貧しくて、日ごとの食物もろくろく手に入らぬことが多かった。しかし、知恵才覚の優れた父から様々のことを教わって、賢い男となっていた。その頃一人のお金持ちの男がいた。この男は非常に珍しい家を建てて、黄色や赤色の鳥の羽根で屋根を葺いた。人々は、彼が莫大な富を持っているというので、寄ってたかって彼をちやほやしていた。彼はすっかりいい気になって、自分は創造主だと言い出した。人々も、たくさんの宝を持っているから神様かもしれないと思っていた。
所があるときその男が思い病気にかかって、どんなに治療をしても治らなかった。それを見ると人々は神様なら病気になってもすぐに治る筈だと、やはり自分たちと同じ人間に違いないと話し合っていた。丁度その頃フアシアクリは旅に出て、あちらこちらを歩き廻っていた。ある日彼はとある森の中で二匹の狐がしきりに何やら話し合っているのを見つけた。彼はそっと狐の側に忍び寄って、耳を澄ました。狐どもはそれに気が付かないで、話を続け、お金持ちの男が重い病気にかかっていて、その理由は男の妻が他の男と仲良くなって夫が邪魔で仕方がないので蛇と蝦蟇を使って、重い病気にした。男の家には二匹の蛇が屋根の上にうろうろしているし、二つの頭を持った一匹の蝦蟇がが石臼の下に潜んでいるということだった。
狐どもの話を聞き込んだフアシアクリは、金持ちの男が可哀想に思えて病気を治してやろうと、金持ちの男の家に尋ねて行った。
家の前に金持ちの男の娘が一人立っていた。フアクシアクリは乙女の可愛い姿に心を惹かれ、乙女が愛してくれれば、すぐにお父さんの病気を治すと言った。乙女はフアシアクリの襤褸と汚い顔をしているのを見て結婚することはできないがお父さんの病気は治してほしいと言って家の中に連れ込んだ。
フアシアクリは病人に向かって、その妻の身持ちが悪いこと、蛇や蝦蟇を使って彼を病気にしたことなど話した。すると隣に座っていた妻はそれを聞くと憤りフアシアクリを睨み、何を証拠に言っているのか、自分は悪人ではないと食ってかかった。フアシアクリは証拠に屋根にいる二匹の蛇と、石臼の下の二つの頭を持った蝦蟇を捕まえて女の前に差し出し詰め寄った。女はもう堪り兼ねて、病人とフアシアクリとを睨み返したまま家から出てしまった。
フアシアクリは、蛇と蝦蟇とを叩き潰してしまった。すると、金持ちの男はたちまち元気を取り返して起き上がった。そして自分の娘を説きつけてフアシアクリの妻にしてしまった。
ところが金持ちの男の息子は、フアシアクリが汚れていたので嫌でたまらなく縁者に持ちたくないのでどうにか追い出そうと考えて、フアクシアクリの妻となった妹に夫は嫌な奴ではないかと問うた。妹も同じ考えであった。
そこで兄は妹に協力するように言って、フアクシアクリに踊りと酒飲みとの技比べを申し込んだ。フアシアクリは困ってしまって、そっと父のパリカカの所に尋ねて行き技比べの話をしてどうすればよいか聞いた。パリカカは笑って自分が勝たせてやると答えた。そしてフアクシアクリを山の麓に連れて行き死んだラマに姿を変えてやって、狐が酒壺と笛をもってやってくるから、死んだふりをして、脅かしてそれを取り上げるがいい。と教えた。
フアシアクリは大地に横たわったままラマの姿で根気よく死んだふりをしていた。すると次の朝どこからとなく牝牡の二匹の狐が現れてきた。牡の狐は酒壺を牝の狐は笛を手にしていた。
狐どもはフアシアクリを見ると餌食が見つかったと酒壺と笛を地面において、急ぎ足にフアシアクリに近づいて来た。フアシアクリは、彼らを近くまで引き寄せて、出し抜けに大きな声を出した。
狐どもはびっくり仰天して、酒壺と笛とを置きっぱなしに逃げ出した。酒壺と笛には、魔力がこもっていたので、フアシアクリはそのおかげで飲み比べ踊り比べに打ち勝つことができた。
金持ちの息子は悔しがり、今度は器量で勝負をしようと、お祭りの晴れ着を着てどっちが立派に見えるかということを試すと言った。フアシアクリは困ってしまって、また、父のパリカカに相談すると、パリカカは、自分が勝たせてやると言って、赤い獅子の毛皮を渡してくれた。
フアシアクリがそれを体に纏うと頭のまわりに虹がかかったかと思う程に美しかった。こうして、彼は器量比べにも勝った。金持ちの息子は気を焦って、今度は家の建て比べでどちらが早く立派な家を建てることができるか試すと申し込んだ。
フアシアクリは困ってまた父のパリカカの助けを借りることにした。パリカカはまた自分が勝たせると言って、世界中にいる鳥や獣類を呼び出して、フアシアクリの仕事に手伝いをするように言いつけた。そしてフアシアクリに昼間は一人で仕事をするように言って、夜には鳥や獣が仕事をしてくれると教えた。金持ちの息子は大勢の人を連れて朝から仕事をしたが、フアシアクリはただ一人でこつこつと働いていた。夕方には金持ちの息子の家はほとんど出来上がったがフアシアクリの家はやっと土台が据えられただけであった。
それを見ると、金持ちの息子は今度こそ技比べに勝てると思って屋根を葺く仕事を残し引き上げて行った。すっかり日が暮れると、あらゆる鳥や獣類が集まって、フアシアクリを助けて仕事を始めたので、夜が明けかかる頃には、金持ちの息子の家と同じように屋根を葺くだけとなった。
朝早く起き出した金持ちの息子はたくさんのラマに屋根を葺く藁をもってこさせることにした。フアシアクリはそれを見ると、一頭の猛獣に向かって、ラマどもが藁を背負ってきたら激しく吼えたてて追い払うように言いつけた。猛獣は承知して森影に隠れ、ラマどもが来たところで吼えたてた。ラマどもは一散に逃げ出してしまった。金持ちの息子は、いつまで待ってもラマが藁をもってこないので、待ち呆けた。フアシアクリはその間に屋根を葺いてしまい勝を占めた。
パリカカはフアシアクリを呼んで、金持ちの息子が技比べでフアシアクリを苦しめようとしていると伝え今度はフアシアクリの方から勝負を仕掛け退治するように言った。
勝負の内容をフアシアクリが尋ねたところ、青い肌着を着て、白い綿を腰に巻き付けて踊り比べをするということだった。
フアシアクリはすぐに金持ちの息子の所に行って、教わった通りの技比べを申し込み、金持ちの息子は申し込みに応じ、青い肌着を着て、白い綿を腰に巻き付けて現れてくると、フアシアクリが出し抜けに大きな声を立てた、金持ちの息子はびっくりして逃げかけた。フアシアクリはそれを追っかけて、金持ちの息子を鹿の姿に変えてしまった。
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石が人になった話
インカ王パチャクチックの時代に、チャンカ族が都のクスコに押し寄せてきた。クスコの人たちは、パチャクチック王に率いられて戦ったが、相手が大勢なので苦戦した。
一人の男が、計略で敵を脅すことを考えて、森の中や丘の上に合った石に投槍と楯とを立てかけて、夥しい軍勢が控えているように見せかけた。すると、パチャクチック王が遠くからそれを見つけてたくさんの見方がいたと叫んだ。また、加勢に駆けつけるように叫んだ。
すると、石が人間に変わって、投槍と楯とをつかみ敵勢の真ん中に突っ込んでいった。不意の襲撃にチャンカ族の兵士どもはうろたえ騒いで、とうとうさんざんに打ち破られてしまった。戦が棲むと、人間に変わっていた石はまた元の形に返ってしまった。
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オランタ物語
ペルーの名高い王者ユパンクィ・パチャクチックの時代に、一人のインカ王族が、クリ・コイルル(嬉しき星)という乙女を持っていた。クリ・コイルルは、頭髪の美しい、眼のすがすがしい、光り輝くような佳人で、数々の王族の息子たちが、頻りに言い寄っていた。オランタという若者もそうであった。オランタは王族の出ではなかったが、雄々しい酋長であった。彼はクリ・コイルルに燃えるような思いを寄せて、どうしてもこの麗しい乙女を我が妻にしなくてはならないと考えていた。その頃風習では、インカ王族でないものが、主筋のインカ王族の乙女と結婚することは掟にかなわないとされていたが、オランタはそうした掟を恐れないほどに激しくクリ・コイルルに恋していたのであった。
ある日オランタは僕のピクィ・チャクィ(蚤脚-のみあし-)にクリ・コイルルと結婚しなければならないと話していた。ピクィ・チャクィは困ったような心配そうな顔をして困ったように普通の身分のものが王族と結婚するのは掟に背くことだと心配した。オランタはどんなことがあってもクリ・コイルルを娶ると叫んだ。すると側にいて二人の話を聞いていた太陽に仕える僧侶がオランタに身に祟りを呼ぶからあきらめるように忠告した。しかしオランタの耳には入らず、正式の結婚をしていないとはいえ、クリ・コイルルはオランタの雄々しい姿と燃える思いに引かれて、心も体も彼に許していた。
オランタは、パチャクチック王の前にでて姫君との結婚を願ったが、パチャクチック王は頭を横に振った。オランタは刀にかけてでも姫君を申し受ける覚悟だと言い捨てて立ち去った。
オランタはすぐにパチャクチック王に謀反の戦をしかけた。王はその勢いに驚いて、慌てて合戦の用意をした。王はルミ・ナウイという武将に命じてオランタを倒すために一群の指図を任せた。ルミ・ナウイは得意そうに引き受けた。こうしてルミ・ナウイは軍勢を進めたが合戦となるとオランタの武勇に悩まされて、さんざんに打ち破られてしまった。そうした騒ぎの中で王女クリ・コイルルは、珠のような女の子を産み落とした。パチャクチックは怒り、仇の子を産んだ女は娘はないと尼寺に押し込めた。
彼女はただ一人、夜となく昼となくオランタを恋い慕いながら嘆き悲しんだ。戦は永く続いた。そしてクリ・コイルルの娘イマ・スマック(いかに美しい事よ)は戦乱のうちに可愛い娘の子となった。イマ・スマックは自分の母が尼寺の一間に閉じ込められていると聞き込むと、付添いの女にせがんで、そこに連れて行ってもらった。哀れな母子は抱き合ってお互いの身の不幸を語り交わした。イマ・スマックはそれ以来同じ尼寺に起伏して母の心を慰めた。
そうしているうちにパチャクチック王が死んで、その子のユタンクィが位につくことになった。オランタの軍は前よりも一層勢いが強くなったので、ユタンクィ王は再びルミ・ナウイを呼び出して、今度こそ謀反の輩を平らげるように言いつけた。ルミ・ナウイはオランタの勇武を恐れていたので今度は計略を使って彼を生け捕りにしようと考えた。
ルミ・ナウイはあらかじめ手下を谷間に隠し、自分は血濡れになって、ただ一人で謀反軍の陣地を訪れた。オランタは驚き怪しんでどうしたのか尋ねると、仲間打ちとなって逃げてきたので手を組んで王の軍勢を叩きつけてやりたいとまことしやかに述べた。気のいいオランタはすっかり騙されて陣地に留まるように言ってその日は酒宴を開いて手下の兵どもをねぎらった。兵どもは酒を飲み酔い、踊り騒いだルミ・ナウイは言葉巧みに兵どもをおだて、酒をあおった。オランタの兵どもは酔いつぶれて眠りルミ・ナウイはそっとオランタの陣地を抜け出して谷間に隠れた兵どもとオランタの陣地に攻め入り敵勢を生け捕りにしてしまった。
オランタはユタンクィ王の前に引き出された。心の広い王はオランタの罪を許してやることにした。そこへへイマ・スマックが入って来て、母を許すように嘆願した。ユタンクィ王はその言葉に感動して自分で尼寺を訪ねていき、クリ・コイルルとオランタの手を握らせて、二人の上に祝福の言葉を与えた。
※昔のインカ族は伝説をもととした多くの戯曲を生み出している。この伝説もアプ・オランタとう戯曲として、古くから口誦されていた。そして十七世紀に入って初めて書物になったと言われる。ペルーのオランタイ・タムプというところに今も残っている堅固な城砦は、オランタの名にちなんでつけたものである。
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